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サーバー電源設計のトレンド概観

データセンターやクラウドコンピューティング技術の急速な発展に伴い、サーバー用電源ユニット(PSU)の設計は加速度的に進化しています。電力出力の増加、高電力密度、そして変換効率の向上により、性能、省エネルギー性、安定性への要求が一層高まっています。これらの要素は、データセンターの運用やエネルギー消費に直接影響を与える重要な要因です。

PSUの効率は、全体的なエネルギー消費や熱管理において極めて重要な役割を果たします。高効率なPSUはエネルギー損失を低減し、発熱を最小限に抑えることで、高負荷時でもサーバーの安定した動作を確保します。さらに、PSUの効率向上により寿命が延び、電源の不安定さによるシステムダウンのリスクを軽減できます。

システムの信頼性を高めるために、冗長電源アーキテクチャは標準的な設計となり、サーバー用PSUの保守性を大幅に向上させています。本稿では、80 PLUS認証をはじめとする国際的なエネルギー基準が求める環境要件について解説するとともに、冗長電源構成がシステムの信頼性と運用安定性の確保に果たす重要な役割について考察します。


1. より高出力の要件


21世紀初頭、サーバー用電源ユニット(PSU)の出力は通常200Wから300Wの範囲でした。しかし、計算能力の需要が急増するにつれて、現代のサーバーの消費電力は大幅に増加し、800Wから2,000Wの範囲に達し、高性能なサーバーでは3,000Wを超えることもあります。

このような消費電力の増加にもかかわらず、サーバー用PSUは依然として定格16Aの IEC 60320 C19 (ソケット) / C20 (プラグ) ACコネクタを主に使用しています。240V AC入力時、電力変換効率を考慮すると、最大出力は3,600Wに制限されており、短期的にはPSU設計のボトルネックとなっています。この電力需要の増加に対応するため、データセンターでは定格20AのIEC 60320 C21 (ソケット) / C22 (プラグ) ACコネクタへの移行が進んでおり、単一PSUの最大出力は4,800Wまで向上しています。さらに、一部の高性能コンピューティング施設では、電流負荷を抑え、電力変換効率を向上させるために、277Vや400VのAC入力の導入も進められています。

AIを活用したサーバーの普及が進む中、データセンターではより高出力の電源アーキテクチャが採用されています。例えば、Hopperアーキテクチャを基盤とするAIサーバーでは、3kWのPSUモジュールが一般的に使用されており、Blackwellアーキテクチャを採用したAIコンピュートサーバーでは、すでに5.5kWのPSUへと移行し、AIトレーニングや推論に必要な膨大な計算能力を支えています。一部のハイエンドAIサーバーでは、消費電力が6,000Wを超えるケースもあります。

このような傾向が続く中、将来のPSU設計は、さらなる高電力密度化や80 PLUS TitaniumやPlatinum認証などの高効率化、そして高度な熱管理技術の導入が進み、AIや高性能コンピューティング(HPC)アプリケーションの厳しい電力および安定性要件に対応する方向へと進化していくでしょう

2. 高電力密度


高電力密度の電源は、さまざまなシステムにおいて重要な役割を果たします。サーバーの計算能力や機能が拡張し続ける中、電力需要も着実に増加しています。この傾向は特に、データセンター、高性能コンピューティング(HPC)、産業オートメーション、医療機器、軍事システムなど、スペースに制約のある用途において極めて重要です。サーバーの筐体サイズは変わらない一方で、電力要件の増大により、より厳しい電力密度の要求が生じています。現代のサーバー用電源は、2000年代初頭の一桁台の電力密度から進化し、現在ではほぼ 100W/in³ に達しています。高電力密度を実現するためには、高効率化と小型化のバランスを取ることが求められます。これには、エネルギー変換損失の低減、熱管理の強化、先進的なコンポーネント技術の統合が不可欠です。

電源トポロジーの観点では、Totem-Pole PFC のような高効率アーキテクチャが導入されることで、伝導損失やスイッチング損失が大幅に低減され、電力変換効率の向上が図られています。また、先進的な窒化ガリウム(GaN)パワースイッチの採用により、部品点数が 40%以上削減され、ソリューションの小型化とコスト削減に貢献すると同時に、信頼性の向上にも寄与しています。GaN スイッチは、高速スイッチングを可能にするだけでなく、電力部品の小型化や放熱要件の低減にも寄与します。さらに、高電力密度設計では、Ideal Diode や ORing コントローラなどの主要コンポーネントの最適化も求められます。これらの部品は、高い電流処理能力、コンパクトなパッケージ、内蔵フォルトモニタリング機能を備える必要があり、PCB の占有面積や部品点数を最小限に抑えることで、最終的にシステムの信頼性と効率性を向上させます。

熱管理も大きな課題の一つです。電力密度が向上するにつれ、熱管理技術もそれに対応して進化する必要があります。ヒートパイプ、ベイパーチャンバー、高度な空冷・液冷技術などのソリューションは、電源モジュール内部の熱負荷を効果的に抑え、電源の寿命を延ばすのに貢献します。

3. 変換効率の向上


2000年代初頭のサーバー用電源ユニット(PSU)は、変換効率が65%を少し上回る程度でした。当時のPSU設計はエネルギー効率の最適化よりも、電力の安定供給を優先していました。従来のコンバータ回路では65%の効率を容易に達成できましたが、サーバーは長時間連続稼働するため、PSUの効率向上は運用コストと消費電力の大幅な削減につながります。

電力変換効率はシステムのエネルギー利用率に直接影響を与えます。例えば、90%の変換効率を持つPSUでは、800Wの出力に対して約888W(800W ÷ 90%)の電力を電源網から供給する必要があります。しかし、効率が80%の場合、1,000W(800W ÷ 80%)の電力が必要になります。この112Wの差は、特に大規模データセンターにおいて、エネルギーの無駄遣いや冷却負荷の増加につながります。

2004年、米国環境保護庁(EPA)はPC向けの電源ユニットに対して「80 PLUS」エネルギー効率基準を導入しました。この基準は、PCだけでなくサーバー用PSUの効率評価の指標としても定着しました。80 PLUS認証では、PSUがさまざまな負荷条件下で少なくとも80%以上の変換効率を達成することが求められます。現在、主流のサーバーPSUは80 PLUS Gold(87〜92%以上)に対応しており、一部の高性能モデルは80 PLUS Platinum(90〜94%以上)を達成しています。80 PLUS認証はPSU設計の重要な基準となっており、20%、50%、100%負荷時の最小効率を規定しています。PSUの変換効率を向上させることで、エネルギー損失や発熱を抑え、システムの安定性を高めるとともに、冷却システムへの負担も軽減できます。

80 PLUS認証は、PSUの効率に応じて以下のレベルに分類されます:
(1) Standard 80 PLUS:80%〜85%以上の効率
(2) 80 PLUS Bronze:81%〜88%の効率
(3) 80 PLUS Silver:85%〜90%の効率
(4) 80 PLUS Gold:87%〜92%の効率
(5) 80 PLUS Platinum:90%〜94%の効率
(6) 80 PLUS Titanium:最上位グレードであり、90%〜96%の効率

80 PLUS認証レベル

4. 冗長化電源装置(RPS)とは?


サーバー電源の設計において、冗長化電源装置(RPS:Redundant Power Supply)は、主要な電源モジュールが故障した場合でもシステムの継続運用を確保するための重要なメカニズムです。この設計により、電源障害による業務の中断やデータ損失を防ぐことができます。通常、RPSは2台以上の電源ユニット(PSU)で構成されており、用途に応じて 1+1、N+1、N+N などのアーキテクチャが選択されます。万が一、1つの電源モジュールが故障しても、バックアップモジュールが即座に引き継ぎ、故障したユニットはホットスワップ可能なため、システムの安定性を維持しながら全体の信頼性を向上させることができます。

(1) 電源冗長化の役割

IT システムやデータセンターでは、高可用性が求められるため、電源冗長化はシステムの無停止運用を実現するための重要な戦略です。複数の電源モジュールを備えたアーキテクチャにより、1つのモジュールが故障してもシステムの動作を維持できます。この仕組みにより、業務の継続性を確保し、データの整合性を向上させるとともに、障害発生時の即時切り替えを可能にし、予期せぬダウンタイムのリスクを最小限に抑えることができます。特に、クラウドコンピューティング機器、データセンター、通信基地局などの分野では、電源冗長化により単一障害点(SPOF:Single Point of Failure)の影響を大幅に軽減し、運用効率を向上させることができます。

(2) 電源冗長化の仕組み

電源冗長化の最大のメリットは、高い信頼性と安定性により、電源異常が発生してもシステムの継続運用を確保できる点にあります。その主な動作原理は以下の通りです:

A. マルチモジュールアーキテクチャ
1つの電源モジュールが故障しても、残りのモジュールがシステムの動作を維持し、単一障害点によるシステム全体の停止を防ぎます。

B. 自動故障切り替え
主要な電源モジュールが故障した際、システムはミリ秒単位でバックアップモジュールへ自動的に切り替わり、重要な負荷への電力供給を継続します。

C. 負荷分散
複数の電源モジュールが同時に稼働し、負荷を分散することでエネルギー効率を向上させるとともに、各モジュールへの負担を軽減し、機器の寿命を延ばします。

D. メンテナンスの容易性
モジュール設計によりホットスワップが可能であり、システムを停止することなく故障した電源モジュールの交換ができるため、保守作業の効率が大幅に向上します。

(3) 適用シナリオ

冗長化電源技術は、24時間365日無停止運用が求められる業界に広く活用されており、システムの安定性を確保し、電源障害による損失を最小限に抑える役割を果たします。

A. サーバーシステム
企業向けサーバー、クラウドコンピューティング機器、データセンター内のラックマウント型サーバー。

B. 通信基地局
ネットワークの安定稼働を確保し、通信障害を防止。

C. 医療機器
人命に関わる重要システム(生命維持装置、手術機器など)で、最高レベルの電源安定性が要求される分野。

5. 冗長電源構成


サーバーの冗長電源設計は、システムの信頼性を向上させ、単一点障害による運用の中断を防ぐことを目的としています。基本的なサーバーシステムでは、1+1の冗長構成が一般的であり、これは稼働用の電源ユニット(PSU)とバックアップ用のPSUで構成されます。より複雑なサーバーシステムでは、N+1 または N+N(N>2)の構成が採用され、高い信頼性要求に対応します。PSU交換時の継続稼働を確保するため、これらの構成では一般的にホットスワップ技術や逆流防止のための ORing 制御が組み込まれています。さらに、N+1 や N+N 構成では複数の PSU が同時に動作するため、負荷分散技術がバランスの取れた電力供給と安定したシステム運用を維持する上で重要な役割を果たします。以下に、主要な冗長電源構成について詳しく説明します。

(1) 1+1 構成

A. 最初の「1」は、通常のサーバー運用に必要な PSU の数を示します。
B. 二つ目の「1」は、バックアップ用 PSU の数を示します。
C. 1+1 構成では、1 台の PSU でサーバーの電力供給が可能ですが、同じ仕様の PSU をバックアップとして追加します。万が一、稼働中の PSU が故障した場合、バックアップ PSU が即座に切り替わり、システムの中断を防ぎます。この構成は、中小規模のサーバーや高い電源信頼性が求められる単独機器に適しています。

(2) N+1 構成

A. 最初の「N」は、通常のサーバー運用に必要な PSU の数を示します(N≥2)。
B. 二つ目の「1」は、バックアップ用 PSU の数を示します。
C. N+1 構成では、サーバーは N 台の PSU で通常運用を行い、追加の 1 台の PSU をバックアップとして備えます。稼働中の PSU のいずれかが故障した場合、バックアップ PSU が自動的に負荷を引き継ぎ、電力供給の継続を確保します。例えば、サーバーの運用に 3 台の PSU が必要な場合、N+1 構成では 3+1 の計 4 台の PSU で構成されます。この構成は、中~大規模のサーバーに広く採用され、特にデータセンターやエンタープライズ用途など、高い安定性が求められる環境に適しています。

(3) N+N 構成

A. 最初の「N」は、通常のサーバー運用に必要な PSU の数を示します(N≥2)。
B. 二つ目の「N」は、バックアップ用 PSU の数を示します(N≥2)。
C. N+N 構成では、サーバーは N 台の PSU で運用し、追加の N 台の PSU をバックアップとして同数配置します。例えば、通常運用に 2 台の PSU が必要な場合、2+2 の計 4 台の PSU で構成されます。この構成は、単一 PSU の故障だけでなく、複数 PSU の同時故障にも対応可能な高い冗長性を提供します。N+N 構成は、金融システム、大規模データセンター、高可用性を求めるクラウドコンピューティング環境など、ミッションクリティカルなサーバーで採用されることが多いです。

(4) 構成選定の考慮点

1+1、N+1、N+N の各構成には、それぞれ適用シナリオとコスト面での考慮が必要です。サーバーの電源アーキテクチャを設計する際には、用途の特性、サーバーの重要度、予算制約を踏まえて最適な構成を選択することが求められます。

Tiger Power は、高信頼性の電源ソリューションを専門とし、システムの安定性と運用継続性を確保するため、さまざまな冗長電源構成を提供しています。冗長電源設計においては、バックアップ PSU がスタンバイ状態(メイン電源レールへ電力供給を行わない状態)の場合でも、ホットスワップ時に即座にフルパワーを供給できるよう最小限の動作状態を維持する必要があります。しかし、待機時のエネルギー消費を削減するために、「コールドスタンバイ」技術が重要なトレンドとなりつつあります。

コールドスタンバイ技術
コールドスタンバイは、バックアップ PSU を高エネルギーの待機状態に維持するのではなく、低消費電力の非動作状態に保つ方式です。稼働中の PSU が故障した場合や急激な電力需要の増加が発生した際に、バックアップ PSU が迅速に起動し、必要な電力を供給します。この設計により、待機時の電力消費を大幅に削減し、エネルギー効率を向上させることが可能となります。また、グリーンデータセンターの省エネ要件にも適合します。エネルギー規制の厳格化と環境意識の高まりに伴い、コールドスタンバイ構成は今後のサーバー電源設計において不可欠なトレンドとなるでしょう。

6. 結論


サーバー電源の設計は、今後もさらなる高性能化に対応しつつ、エネルギー効率と信頼性のバランスを取ることが求められます。計算能力の向上に伴い、高電力密度設計が重要な課題となり、高度な電源コンポーネントと革新的な熱管理技術を活用して電力供給能力を向上させることが不可欠です。一方で、冗長設計やホットスワップ技術の導入により、電源障害時にもシステムの継続稼働を確保し、安定した運用を実現します。

今後、80 PLUS認証をはじめとする国際的なエネルギー規格に準拠した高効率設計が主流となり、企業のカーボンフットプリント削減や運用コスト最適化に貢献していくでしょう。Tiger Powerは、高負荷のコンピューティング環境においても安定した電源供給を実現し、包括的な電源管理戦略を提供することで、企業の最適なパフォーマンス達成を支援してまいります。


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